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2分の1成人式、生い立ち授業の功罪・・・無い記憶に傷つく子供も

2015/05/15

カテゴリ
【週刊】教育関連ニュースまとめ
キーワード
生い立ち授業 里親 養子 母子手帳 二分の一成人式

はじめに

学習指導要領に基づき、生活科で児童が自らの生い立ちを振り返る小学2年生の授業について、虐待などさまざまな理由で親と暮らせない児童を養育する里親らから戸惑いの声が上がっている。「一律の取り組みが、大きな負担になっている子どももいる」。切実な訴えに、専門家も「家族が多様化する中、学校側に配慮が必要」と指摘する。(2015/5/8Yahoo!ニュース

本記事では、このニュースを題材に生い立ち授業のあり方について考えていきます。


生い立ち授業とは

そもそも生い立ち授業とは何なのでしょうか。

生い立ち授業は、小学1,2学年の生活科学習指導要領の次の項目に対応するものです。

  • 2.内容
    (9) 自分自身の成長を振り返り,多くの人々の支えにより自分が大きくなったこと,自分でできるようになったこと,役割が増えたことなどが分かり,これまでの生活や成長を支えてくれた人々に感謝の気持ちをもつとともに,これからの成長への願いをもって,意欲的に生活することができるようにする。

これをまとめると、①周囲の人々との関係の中で②自らが成長してきたことに気付かせることで、③周囲の人々に感謝をし、④かつ今後も成長していこうという意欲を持たせる、ということになるでしょう。

次に、同じく小学1,2学年の生活科学習指導要領の目標のうち、上記の内容と関連が明確な項目について見てみます。

  • 1 目標
  • (3) 身近な人々,社会及び自然とのかかわりを深めることを通して自分のよさや可能性に気付き意欲と自信をもって生活することができるようにする

これは上記の①から④のうち③以外の項目が含まれていることが分かります。残りの③(周囲の人々に感謝をし)については、感謝は教育で誘導してまでさせるものなのかという論点も出てくるでしょう。

ですが本記事ではその点には深入りせず、残りの3つの項目を満たすような生い立ち授業のあり方を考えていきます。


生い立ちを語れない家庭も

では、実際にどういった生い立ち授業が行われているのでしょうか。生活科が施行された年である1992年の生活科活動事例集をまとめた表を見てみます。

事例は様々な種類のものに渡っています。たしかに例えば赤ちゃん時代の洋服をからだにあててみれば体の成長が分かるでしょうし、小さい頃の様子を紹介しあえば心の成長が分かるかもしれません。したがって、これらの事例は学習指導要領の目的に沿ったものと言えます。

しかしニュース記事でも取り上げられていたとおり、こうした授業への対応が困難な家庭もあります。

里親の下や児童養護施設等の児童福祉施設で暮らす子供たち等は、生みの親がいなかったり出生時や成長の記録がなかったりします。そうした子供たちに対して、「生まれた時のことを」「両親に聞いてくる」という課題を与えた場合、子供たちもその里親や施設職員たちも対応に困ることは明確でしょう。

それだけにとどまらず、子供がなぜ自分にだけは親がいないのかといった思いを持ってしまった場合、学習指導要領の目標にある、自分のよさに気付くということと逆の結果を招きかねません。

ニュース記事でも次のような事例が紹介されていました。

「本当につらい作業だった」―。小学3年の女児を養育する静岡県中部の里親は、女児が2年生だった今年2月に取り組んだ生活科の授業に苦しんだ。担任から「名前をつけた理由」「1歳の時に初めてできたこと」などの質問が書かれたプリントを宿題で配られた。絵本の形にまとめるため、思い出の写真などを準備するようにも言われた。
女児が里親の元にやってきたのは小1の時。写真はあったが、実の親と連絡は取れない。担任に相談すると「ありきたりなことでいいから書いて」と返ってきた。名前の由来や乳幼児期の様子など「想像で書くしかなかった」と里親は話す。女児は直接的な拒絶の言葉こそ口にしなかったが、しばらくは表情が暗く、怒りやすい状態が続いたという。(2015/5/8Yahoo!ニュース

このようなことから、生い立ち授業のつくりには慎重な配慮が求められるのです。


教員に求められる配慮とは

これに関連して、現職の小学校教員に対して行われた実態調査を基に、教員はこうした点にどのように配慮をしているのかを見てみます。

まず前提として、こうした配慮をするうえで教員には次のような難しさがあるようです。

「母子家庭・父子家庭・ステップファミリーは,学校としては掌握しやすいが,里親家庭や養子縁組家庭については,学校への正式な書類等はないので,学校としては把握しにくい.保護者からの話があれば伺うこともあると思われるが,実際には,なかなか保護者からのそのような話はないに等しい.(学校側がそうではないかと思っても,保護者に担任が伺うことは大変難 しい.)」
                   森和子「非血縁家族の中で育つ養子のための『生い立ちの授業』のあり方」

このように配慮が必要な子供をすべて教員が把握できているわけではないのです。この点については次のような対応をとっているケースが複数あるようです。

事前に学年だより で取り組みについて知らせ,差し支えのある場合は連絡をもらうようにして,回答できる方のみにお願いしている
                   (森和子「非血縁家族の中で育つ養子のための『生い立ちの授業』のあり方」

このようにすべての子供に必要な配慮を行うためには、家庭や施設との密なコミュニケーションが必要になってくるのです。

ではこうしたことも行った上で、内容面で生い立ち授業にどのような工夫が考えられるのでしょうか。この点を前述した、生い立ち授業の目標をふまえて考えてみます。

生い立ち授業は前述のとおり、子供に周囲の人々との関係の中で自らが成長してきたことに気付かせることで、今後も成長していこうという意欲を持たせるというねらいで行われているものです。これを満たすあり方であればよいということになります。

これを満たす生い立ち授業のあり方は一つではないでしょう。自らが成長してきたことに気付かせたいのであれば、赤ちゃんの頃の洋服や写真に限って持って来させる必要はなく、生まれてから現在にいたるいつでもよいので過去にあった出来事を基に自らの成長に気付かせればいいはずです。

また、周囲の人々との関係という意味であれば、父親と母親に限る必要もなく、子供がお世話になっていると感じている周囲の大人であれば誰でもいいはずです。

こうした課題設定の配慮をすることで、生い立ち授業の目標を達成しつつもどの子供もどの家庭等も傷つけない授業が展開できるようになります。そのためにも、前述のとおり各家庭や施設との密なコミュニケーションが重要になってきそうです。

とはいえすべての家庭の事情を完璧に把握することは不可能です。一教員の想像のつかない家庭事情を抱える子供がいる可能性も考慮したうえで、可能な限りリスクを抑えながら授業を展開する必要があると言えます。

また同様の配慮が必要な場面として、以前2分の1成人式が話題になっていました。こういった場面も含めて子供たちへの配慮を欠かさないでいきたいものです。

子供たちのさらなる成長を促すねらいで行う生い立ち授業等のために子供たちが傷ついては元も子もありません。教員の細やかな配慮が求められています。

 

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記事執筆:さくま

都内で政治学を学ぶ大学生です。
みんなが活き活きと生きられる社会を目指しています。

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