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メロスは走っていなかった!走れメロスの怠け癖を徹底暴露!

2015/05/14

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国語 太宰治 走れメロス 教科書

メロスは実は「ダメ人間」? 

国語の教科書の定番読み物・『走れメロス』(太宰治)。勇猛果敢で正義感の強いメロスが、暴虐な王に真の友情を示した感動の物語だという印象を持っている方が多いのではないでしょうか。しかし実は、『走れメロス』をよく読んでみると、メロスの「ダメ人間っぷり」が見えてくるとも言われます。この記事では、メロスの行動をあえて批判的に読み解き、メロスの人間性を見つめ直します。


 

『走れメロス』のあらすじ

ある残虐な王に腹を立てた牧人・メロスは、王を殺して民を救おうとするものの、実行前に捕らえられ、処刑を宣告されます。友人セリヌンティウスを人質として差し出したことによって、故郷の村に戻って妹の結婚式を見届けることを許されますが、セリヌンティウスを救うためには、三日以内に市に戻る必要がありました。約束の期限直前、幾度も襲いかかる困難に負けず、メロスはなんとか市に戻ります。そして、セリヌンティウスと感動の再会を果たし、その友情の証明によって非道な王をも改心させるのでした。
 

メロスは自信家の怠け者?知られざるわがままっぷり

メロスは勝手に親友を身代わりにした

この市にセリヌンティウスという石工がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を絞め殺して下さい。

大切な友人・セリヌンティウスを、本人の許可を得ずに身代わりとして差し出すことを申し出ます。ちなみに、セリヌンティウスの反応は以下の通りです。

メロスは、友に一切の事情を語った。セリヌンティウスは無言で首肯(うなず)き、メロスをひしと抱きしめた。

知らぬ間に命を奪われる危険にさらされることになったセリヌンティウス。メロスを罵倒しても良いのに、何も言わずにメロスの願いを聞き入れます。メロスのことを、心から信頼していたのでしょう。
 

メロスは歩いていた

メロスは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。
メロスはその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、村へ到着したのは、翌(あく)る日の午前、陽は既に高く昇って、村人たちは野に出て仕事をはじめていた。

市から村に来る際は、深夜過ぎに出発し、次の日の午前、陽が既に高く昇ったころに到着しています。0:00に出発して、10:00ごろに着いたと考えると、想定される移動時間は、約10時間ほど。

かつての一里は現在の距離にして約4kmなので、十里は約40kmです。40kmを10時間で移動する場合、平均時速は4km。一般的に、人間の歩行速度は時速4kmと言われています。移動時間の想定が正しい場合、実は、メロスは走っていなかった、むしろ、平均的な早さで歩いていた、ということになります。

確かにメロスは妹の婚礼の道具を持っていたでしょうし、道も現代ほどは整備されていなかったでしょう。速度が遅くなるのは仕方ありませんが、もう少し早く移動できないものでしょうか。
 

メロスは村に帰ったら寝た

メロスは村に辿り着くと、妹に、またすぐ市に戻ること、結婚式を明日開くことを告げます。以下は、その後の記述です。

家へ帰って神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。眼が覚めたのは夜だった。

なんと、メロスは夜まで寝入ってしまったのです。

確かに10時間もかけて40kmを休まずに走ったら(歩いたとしても)とても疲れているでしょう。一通り妹の結婚式の準備を終えた安心感も加わったことを考えると、このタイミングで寝入ってしまったことはまだ仕方のないことかもしれません。
 

メロスはまた寝た

そして結婚式を終えた後、またメロスに人間らしい部分が現れます。

あすの日没までには、まだ十分の時が在る。ちょっと一眠りして、それからすぐに出発しよう、と考えた。(中略)メロスは笑って村人たちにも会釈して、宴席から立ち去り、羊小屋にもぐり込んで、死んだように深く眠った。

妹夫婦と村の人々に囲まれ、ここに留まりたいと思ってしまったメロス。未練が生まれてしまうのは、人間として当然のことです。出発することはなんとか決意したものの、少しでも長く家に留まりたいと感じてしまっても無理はありません。
 

メロスは寝過ごしても能天気だった

結婚式の後に寝入ってしまったメロス。以下は、起きたときの様子です。

眼が覚めたのは翌る日の薄明の頃である。メロスは跳ね起き、南無三、寝過したか、いや、まだまだ大丈夫、これからすぐに出発すれば、約束の刻限までには十分間に合う。

 薄明の頃とは、日の出前のこと。大きな寝坊とは言えないかもしれませんが、当初の予定の「一眠り」以上は眠ってしまっていたのでしょう。そして、起きても、時間までには余裕がある、と楽観的な姿勢です。

市から村に戻ってきた際の想定移動時間は、約10時間。確かに、4:00の日の出頃に出発すれば、19:00頃の日没までには間に合うと見積もることは可能です。

しかし、休まずに全力で移動して10時間の距離。もう少し焦っても良いのではないでしょうか。親友の命が懸かっている状況においてはなおさらです。
 

メロスは市に向かうのを止めそうになった

さらば、ふるさと。若いメロスは、つらかった。幾度か、立ちどまりそうになった。えい、えいと大声挙げて自身を叱りながら走った。

なんとか出発はしたものの、まだ未練は残っていて、立ち止まりそうになってしまいます。とはいえこの時点でのメロスは、自分を奮い立たせて走り始めたので、まだ許せます。

ところで、大声をあげて走っているメロスを想像してみると、思わず笑ってしまいそうになりませんか。
 

メロスはゆっくりと歩いた

そんなに急ぐ必要も無い。ゆっくり歩こう、と持ちまえの呑気さを取り返し、好きな小歌をいい声で歌い出した。

隣村に着くと、故郷への心残りも無くなります。そこで出てきたのが、心の余裕。歌をうたい始め、どこか楽しんでいる様子さえ感じられます。そしてなんと、メロスは明らかに走っていなかったのです。

同じく、気持ち良さげに歌いながら歩いているメロスを想像してみてください。走れメロス、と言いたくなりませんか。
 

 メロスは泣いた

しばらく歩き、道も半ばに差し掛かります。ですが、そこで氾濫している川が目の前に現れました。そこでメロスがとった行動です。

彼は茫然と、立ちすくんだ。(中略)メロスは川岸にうずくまり、男泣きに泣きながらゼウスに手を挙げて哀願した。

そう、 メロスは、泣いていたのです。「時は刻々に過ぎて行きます。太陽も既に真昼時です。」と神に訴えかけますが、メロスがのんびりとしていたがために、時間に余裕が無くなっているのだと、厳しく言うこともできるでしょう。

結局、狂い荒れる濁流に自ら飛び込み、向かい岸まで泳ぎきります。身の危険を冒しながら思い切って川を渡ったこのメロスの行動もまた、誉めてもよいかもしれません。
 

メロスは諦めた

川を渡ると、今度は盗賊に襲われます。なんとか攻撃をかわし先へと進むものの、体力が限界を迎えてしまうのでした。

一気に峠を駈け降りたが、流石に疲労し、折から午後の灼熱の太陽がまともに、かっと照って来て、メロスは幾度となく眩暈を感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、よろよろ二、三歩あるいて、ついに、がくりと膝を折った。立ち上る事が出来ぬのだ。天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。

遂に立ち止まり、再び泣き始めます。メロスが泣きながら考えたことは、次の通りです。
 

メロスはうぬぼれだった

ああ、あ、濁流を泳ぎ切り、山賊を三人も撃ち倒し韋駄天(いだてん)、ここまで突破して来たメロスよ。真の勇者、メロスよ。今、ここで、疲れ切って動けなくなるとは情無い。

メロスは、自分のことを「韋駄天」「真の勇者」だと感じています。韋駄天とは、足の速い人のこと。自分に対して強い自信を持っていることが分かります。

ちなみに、前述の繰り返しとなりますが、「急ぎに急いで」人間の平均的な歩行速度だったメロス。彼の足は、本当に速かったのでしょうか。
 

メロスはやけくそになった

おまえは、稀代の不信の人間、まさしく王の思う壺だぞ、と自分を叱ってみるのだが、全身萎えて、もはや芋虫いもむしほどにも前進かなわぬ。路傍の草原にごろりと寝ころがった。身体疲労すれば、精神も共にやられる。もう、どうでもいいという、勇者に不似合いな不貞腐(ふてくさ)れた根性が、心の隅に巣喰った。私は、これほど努力したのだ。 (中略)ああ、もう、どうでもいい。

精神が疲れきり、自分は努力したものの無理だった、と諦めてしまいます。自分は不幸だ、笑ってくれ、と投げやりな考えに陥ってしまうのです。
 

メロスは言い訳した

私は急ぎに急いでここまで来たのだ。濁流を突破した。山賊の囲みからも、するりと抜けて一気に峠を駈け降りて来たのだ。私だから、出来たのだよ。ああ、この上、私に望み給うな。

これまで自分が行った努力を思い返して自己正当化し、心の中でセリヌンティウスに言い訳します。
 

メロスは再び寝た

ああ、もういっそ、悪徳者として生き伸びてやろうか。村には私の家が在る。羊も居る。妹夫婦は、まさか私を村から追い出すような事はしないだろう。正義だの、信実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない。(中略)四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。

メロスは自分が理解され、愛される村で生きていくことを考える一方で、正義や愛の美しさを否定します。そして物語三度目の睡眠をとり始めるのでした。
 

メロスは友を殴った

目覚めた後、メロスは力を取り戻します。再び走り出し、セリヌンティウスが処刑されようとしていたその瞬間に、なんとか間に合うことができました。以下は、メロスとセリヌンティウスの再会の際のやり取りです。

「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」
 メロスは腕に唸(うな)りをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。

メロスのことを疑った、だから自分を殴れ、とメロスに告げたセリヌンティウス。その言葉どおり、メロスは力一杯セリヌンティウスのことを殴ります。友情の証であることは間違いありませんが、自分自身の身勝手な行動によって死の危険にさらした親友を、殴ったのです。改めて考えたとき、メロスのこの行動に否定的な気持ちになる方もいるかもしれません。
 

太宰治も設定ミス?『走れメロス』の矛盾

物語の冒頭では、結婚式は○○の予定だったのに

実は、上でご紹介した以外にも『走れメロス』には指摘の余地がある部分があります。

以下は物語冒頭、メロスが市にやってきた際の記述です。

結婚式も間近かなのである。メロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。

御馳走を買いに行くくらいは、結婚式が近いうちに行われると予想できます。しかし、村に戻った際に結婚式を早めてほしい、と妹婿に頼んだ際、婿からはこの想定を裏切る予想外の反応が帰ってくるのです。

メロスは起きてすぐ、花婿の家を訪れた。そうして、少し事情があるから、結婚式を明日にしてくれ、と頼んだ。婿の牧人は驚き、それはいけない、こちらには未だ何の仕度も出来ていない、葡萄(ぶどう)の季節まで待ってくれ、と答えた。

花婿によると、婚礼の準備は何もできていないとのこと。メロスがせっかちな性格だったのか、婿との認識がずれていたのか。太宰治も気がつかなかった、物語の不思議な部分です。
 

読み方を変えれば、文学は一気に面白くなる

太宰治の名著『走れメロス』の捉え直しはいかがでしたか。上記のように読み解いてみると、親しみが湧いてきませんか。本や教科書を読むのが好きではない、という小中高校生はたくさんいます。そのような児童生徒に対して、様々な文学のあまり知られていない設定や背景を伝えることができたら、文学に対する苦手意識が幾分かは収まるかもしれませんね。
 

参考文献
中学生指摘の『走れメロス』の矛盾 評論家が更なる矛盾指摘 
「走れメロス」は走っていなかった!? 中学生が「メロスの全力を検証」した結果が見事に徒歩

※ 本記事で使用した『走れメロス』の文章は、青空文庫より引用しました。
 

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記事執筆:瀬戸 亜希菜

教員ステーションの運営スタッフをしている大学4年生です。
教育に携わる全ての方のお役に立てると嬉しいです。

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