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【第1回 インクルーシブ教育の本質に迫る!】45分間おとなしくすわっているのが正しいってホント?

2015/05/12

カテゴリ
教育関連団体インタビュー
キーワード
インクルーシブ教育 特別支援教育 発達障害 学習障害 指導 ウィングル リタリコ 学習塾 多様性 価値観 学校 ICT 支援員 合理的配慮 野口晃菜

インクルーシブ教育って一体何?

皆さんはインクルーシブ教育という言葉をご存知ですか?
インクルーシブ教育とは、人間の多様性の尊重等を強化し、障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能にするという目的の下、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みです。
そこでは、障害のある者が一般的な教育制度から排除されないこと、自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること、個人に必要な「合理的配慮」が提供されること等が必要とされています。(参考:インクルーシブ教育システムに関する基本的な考え方
今回は、インクルーシブ教育の研究科である野口晃菜さんから話を伺いました。

インクルーシブ教育研究者、野口晃菜さん

インクルーシブ教育研究者ということですが、具体的には何をされているのでしょうか?
メインでやっていることが2つあります。 1つは筑波大学の大学院に在籍(博士課程)して、アメリカのインクルーシブ教育を研究しています。こちらは今年度中に終える予定です。 もう1つは民間企業で教育サービスを提供しています。 そのほかにもインクルーシブ教育あぜみを主催しています。

 

「インクルーシブ教育研究会あぜみ」では何をしているのですか?
教育に関する研究をしている学生や若手研究者を集めて、領域横断的にインクルーシブ教育を検討しています。 今までインクルーシブ教育は「特別支援教育」の文脈でしか語られませんでしたが、そうではなく、全ての教育分野に関わると思っている問題意識から始めました。

 

今後の展望は?
以前は小学校にいる障害をもった子どもたちを教える非常勤講師をしていました。ただ、より良くするための提案ができるかという部分では、いち教師、いち非常勤講師としての限界を感じ、もっとマクロな視点で教育に関わっていきたいと、大学の教員になりたいと考えるようになりました。

民間でガンガンやっていく人も必要だと思うのですが、私の役割はそこじゃないなと。(笑) やはり研究者として、大学の教員として関わった方が、自分の価値はあるだろうなと考えています。今までの色々なところとのつながりを生かして、研究と実践をつなげていくというのをやっていきたいですね。

 

 

インクルーシブ教育

インクルーシブ教育に関して、教師など学校関係者みんなが知っておくべきことは何だと思いますか?
子どもに対しても、大人に対しても、もっと多様な価値観が存在していることが前提となってもいいんじゃないかなって思っています。

たとえば、学校教育の中で、同僚同士の教育観が違うというのを前提とした上で組織運営をしていくという視点が大切になってくると思います。子どもたちに対しても画一的な価値観を押し付けるのでなく、子どもたち一人ひとりがそれぞれの価値観を形成できるような、一人ひとりの価値観が違って当たり前なんだよ、というような教育の在り方、それが「インクルーシブ教育」だと思っているので。

今、社会の価値観は多様化しています。それなのに、学校の中で画一的な価値観が正しいと教えるのは間違っています。社会に出たら自分とは違う価値観の人が当たり前のようにたくさんいて、その中でいかに共存していくかを考えられる大人になってほしいと考えています。

 

学校教育は画一的な価値観を押し付けていますか?
押し付けていると思いますよ。例えばそもそも何のために45分間、おとなしく座っているのが正しいとされているのかよくわからないです。どなたか根拠をしっている方がいらっしゃったら教えてください。

 

45分座ってくれた方が、効率的で教えやすいからではないですか?
それは大人のための教育ですよね。誰のための教育なの、って感じです。

最近はアクティブラーニングだとか、学びあいだとか、色んなやり方、今までの当たり前をひっくり返す取り組みが増えてきて素敵だなと思っています。(45分間の一斉授業なんて)もともと誰が決めたんですかねって感じです。そういうことを自覚して、検証した上で、やっぱり一斉指導がいいと考えてやるのはいいけど、それしか知らない、当たり前だからやっているというのは思考停止だと思います。そういうところから脱しないと、多様な子どもたちに学校教育は耐えられない、子どもの多様性に耐えられるキャパがないと思います。

もともと、障害のある子にとって、どんな教育がもっともいいのかなって考えてきたんですよ。ただ、今までの日本の歴史を調べたり、実際に小学校に入ったりする中で、特別支援教育を変えても意味がない、障害児教育だけを変えてもまったく意味がないなと考えるようになりました。

 

それはどういうことですか?
この子は障害があるからこういう教育をしていきましょうというのは、そもそもの通常教育が、画一的ならば意味がないんです。通常教育自体が多様にならないと、障害のある子たちにとって多様な教育を用意しても意味がない

今言われているのが、通常学級に発達障害の子がいますってなったときに、生徒指導の一環として離籍した子どもは叱る、でも発達障害の子は叱らないってなっちゃってる。でも、それって本質的に違うと感じます。

たとえば、学習障害の子に対して、タブレットを使っていきましょうとなったとします。それが今後当たり前になっていくんですが、そうなったときにほかの子達は普通にノートを取っています、そのときに先生がなんて説明するかというと、「あの子はノートで学習できないからタブレットを使っています」となります。それがインクルーシブかというと、私はインクルーシブじゃないと思う。

そもそも子どもたち一人ひとりが多様であることを前提とした上で、一人ひとりに質の高い教育を提供していくという考えに立たないと意味がないと思います。障害のある子だけに合理的配慮といって特別な支援をしていくっていうのは違くて、そもそも一人ひとりが違っていて、それぞれにあった教育を提供していくという視点に立たないと、文化として、「やっぱりあの子達は特別でしかないんだよ」、「僕たちとは違うよね」という二つに分かれてしまうというところが本質的ではないんです。

 

では、理想の姿とはどのようなものですか?
教室の中で一人ひとりが違う学び方をする。見る方が得意な子もいれば、書く方が得意な子もいます。興味関心が強い子がいれば、めちゃくちゃこだわりの強い子、そうじゃない子もいます。一人ひとり違うというのを前提とする

たとえば、漢字を学ぶときにどうやってやるのがいいのか、全員がドリルで学ぶことが一番いいのかって言うと、そうでもないと思うんです。色んな学び方があって、その子たち一人ひとりが自分にあった学び方ができるということ。その中で学習障害のある子はタブレットで学ぶのがいいのかもしれない、そういう視点で見ていきたいですね。

 

すごくコストがかかってしまいそうな気がするんですが…
どうですかね。本当にそうなんでしょうか。

この間アメリカのある学校に行ってきて、その学校は90%が貧困層で、いわゆる生活保護を受けている家庭なんです。その中では、限られている先生という資源を使いながら、どうやって一人ひとりに合った教え方をしていくのかっていうのが、すごく工夫されて効率よくやられていたんです。

先生とアシスタント的な人、チューターがいて、両方がICT(情報通信技術)をうまく活用しているんですね。先生が教えなきゃいけないことと、ICTを使った方が個々のニーズに対応できること、とをきちんと分けて考えている。

読み・書き・計算は、先生の一斉授業が効率よいかというと、そうでもないと思うんです。むしろタブレットを使って、自学自習できる子は自分でどんどんできる、それができない子に対して、アシスタントがフォローに入る、というようなことをすれば、先生がやるべきこととICTとか先生の資格を持っていない人でもできることとは、また別のことになってくると思うんです。そこをうまく分けることによって、効率よく個々のニーズに対応していました。

たとえば今、日本の学校教育の中にも色んな資源が入っています。その資源が効率的・機能的に使えているかというとそんなことない。その人たちが機能しているかというと機能していないんです。

特別支援教育の支援員が入りました。その人たちが、子ども一人ひとりに必要な学びをわかってるのかというと、ほとんど研修がなされないまま、担任の先生もどう活用していいかわからないのが現状です。既存の資源を活用すればもっともっと良くなると思います。仕組みや、ちょっとした工夫で。最低限の資源は必要だけど、今ある資源を活用すればもっともっと質の高い教育は可能だと思っています。少人数の学級になれば質が高まるのかって言うと私はそうじゃないと思います。
小学校のクラスに発達障害の子がいます。じゃあ支援員つけましょうということになって、その支援員が何をしてるかって言うと、とにかく隣にいて、その子が他の子と同じようなことをできるように、刹那的に、指導しているだけなんですよ。本当にその子に必要な支援ができているかって言うと、できてないんですよ。そもそもその子に必要な学びって、他の子と同じことに適応するのが本当に必要なのかっていうのを考えると、そうじゃないんですよ。

たとえば学習障害の子が学級にいて、支援員がいて、とにかく苦手な漢字をマスの中に書くっていうことだけを目的にやるっているのは違いますよ。その子はそもそも視覚的な情報を入手することにものすごく困難がある、それが障害だからです。これからそういった子に合理的配慮といって、パソコンやタブレットを使って教育する時代が来ます。そうした中で、無理やり自己肯定感が下がるような感じで、漢字をひたすら書かせることが本当にいいのか、考えていかなきゃいけないですよ。

他の子と同じタイミングで同じことができないっていうだけで、学校に行くことが怖くなってしまって、学校に行けなくなる。そういう子メチャクチャたくさんいるんですよ。ただ、先生たちは「あなたのためよ」って言って無理やりやらせるんですよ。その子の未来を考えたときに、今、自己肯定感が低下したら意味ないでしょって思うんです。 

 

同じことをやらせるというのは、社会に出たときに必要な我慢を教えるという意図もあるのでは?
我慢させないと指示に従えないってよく言われるんですけど、じゃあ指示に従うことだけができる子って、それを第一優先に教えることって、その子が本当に自立して生きていくことにつながるんでしょうか。それって困ったときに人に助けを求められなくなるんですよ。なぜかというと、我慢することがいいことだと思っているから。それでその人たち一人ひとりの幸せにつながるでしょうか。私はつながらないと思います。

別に我慢することが悪いって言ってるわけではないんです。我慢を押し付けることが良くないって言ってるだけで、その子が我慢を選択できることは大事なことだと思います。その子自身が、今は我慢しといた方がいいかなってそういう選択をできるのであれば、選択したらいいと思うんですが、押し付けることで我慢することがいいことだと学習してしまう、それって危険です。自分がやりたくないって感じたときに、それを素直にやりたくないって言える力ってすごく大事だと思うんですよ。大人もそうです。障害の有無にかかわらず、そうだと思います。
でも、その感情を泣くという方法でしか表せないのは違うと思っていて、その感情を別の方法で表現して、人に伝えるっていうのが大事。怒ることは別に悪いことじゃない、でも「怒り」を殴るっていう行動で示したり、叫ぶっていう行動で示す子には、それはあなたにとっても得じゃないよと提案します。別の方法で伝えた方が相手に伝わるよっていうのは理解してもらわないとだめだなって思うんですよ。

今、特別支援教育の中で行われているのは、いかにその子を社会の中に適応させていくか。それは大事な視点だし、その子が一人で生きやすくなるような武器(相手に理解してもらいやすい表現の仕方)を授けています。でもその一方で社会に対しても語りかけなきゃだめだなって思ってます。社会自体がもっと多様な人たちを、受け入れやすくなるような、そういう組織をもっともっと作っていかないとだめだなって思います。

 

次回に続く...
(記事執筆:犬塚・佐藤)

おわりに

次回はいよいよインクルーシブ教育の本質に迫ります。

いろんなところで言われているインクルーシブ教育とはちょっと違うと思います。(野口さん)

野口さんの考えるインクルーシブ教育と、いろんなところで言われているインクルーシブ教育の違いとは何なのでしょうか。みなさんもぜひ考えてみてください!明日配信予定です!

 

野口晃菜さんも分科会ゲストで参加されます!

※この記事は、昨年の教育イベントALL関東教育フェスタ2014夏 に向けて執筆されたものを再掲しています。

応募はこちらから!

【日時】2014年6月28日(土)/29日(日)
【場所】国立オリンピック記念青少年総合センター
(小田急線 参宮橋駅徒歩5分)
 
【主催】ALL教育フェスタ実行委員会

◆基調講演
国際バカロレア機構アジア太平洋地区理事/東京インターナショナルスクール代表 坪谷ニュウエル郁子さん
 
◆分科会1
・「反転授業」(株)ハンテンシャ代表取締役社長 加藤大さん
・「edutech」 アオイゼミ代表 石井貴基さん
・「インクルーシブ教育」 筑波大学大学院/株式会社LITALICO 野口晃菜さん
 
◆分科会2
・「オルタナティブな学校」 東京サドベリースクール 杉山まさるさん
・「海外の先進教育」Peaceful School 福嶋史さん
・「注目の私立学校」 関東第一高校 横山北斗さん
  
◆分科会3
・「国際バカロレア」坪谷ニュウエル郁子さん
・「先駆的な授業」 東京都立保谷高等学校 鍋田修身さ
・「教育系スタートアップ企業」 a.school 校長 岩田拓真さん/ manabiai school 代表 杉山史哲さん 

 

その他の分科会ゲストインタビュー!

ALL関東教育フェスタ2014夏の分科会ゲスト
【クマヒラセキュリティ財団、福嶋史さん】
 オランダ発!21世紀を生き抜く力を身に付ける教育プログラム【ピースフルスクール】
「先駆的な授業」東京都立保谷高等学校、鍋田修身さ
 これからの新しい授業のカタチ!【生徒全員が理解できる授業、学び合い】
【アオイゼミ、石井貴基さん】
 オンライン「無料」学習塾の可能性!~アオイゼミ~

ALL関西教育フェスタ2014夏の分科会ゲスト
【インターナショナルスクール「神戸ドイツ学院・ヨーロピアンスクール」、ホワイト宏子さん】
 公教育の常識を覆す「国際バカロレア」とは?神戸ドイツ学院ヨーロピアンスクールを直撃①
【立命館宇治高等学校教諭、仲田毅先生】
 魅力がいっぱい!学び合いで、みんなが幸せに生きる社会に

特別支援教育に関心のある方におすすめ!

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