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PISA型学力は本当に新しいのか?

2014/03/08

カテゴリ
日本の教育
キーワード
PISA 学力 TIMSS

はじめに

昨年度末、2012年度のPISA(学習到達度調査)の結果が発表されました。日本は好成績おさめ、その理由を「脱ゆとり教育のおかげ」とする報道が話題を呼び、様々な意見が紙面を賑わしました。日本でこれほどPISAが注目されるのは、PISAが知識詰め込みの学力ではない新しい学力を測っているテストだからです。

…………
本当でしょうか?
「PISAが測っている学力」と、いわゆる「知識詰め込みの学力」は違うものなのでしょうか?

結論から述べると、僕は、「わりと同じ学力」だと考えます。その理由を示すために、今回は「新しい学力テストの代表PISA」と「古い学力テストの代表TIMSS」を比較していきます。

ちなみに、PISA報道に関して特に注目が集まる「本当に学力が低下(or 向上)しているのか」というテーマに関してはこちら詳しいです。本記事と主張が同じ所もあれば少し異なる所もあるので、合わせて一読を。


PISAとTIMSSって?

PISAが新しい学力だ、と言われる時に決まって対比されるのがTIMSS(国際数学・理科教育動向調査)です。PISAとTIMSSは共に国際学力調査であり、日本全国から偏りなくサンプルが抽出されている大規模調査であるため信頼性が高いテストです。そして、PISAとTIMSSが対比される理由として、

  • TIMSS … 旧来型の学力 (知識詰め込み型) 
  • PISA … 新しい学力(情報編集能力)

といった「イメージの違い」が世間的に存在していることが挙げられます。実際には、TIMSSは「学校カリキュラムの定着度」、PISAは「社会に関係する課題を積極的に考えられるかどうか」を測っているとされています」。これだけみても、「旧来型 vs 新しい学力」 という標榜は少しずれてない?と思いたくなりませんか。

 

PISAとTIMSSの結果が一緒!?

なぜ、PISAとTIMSSで測られる学力が「ほぼ同じ」だと言えるのか。それは、国際的に見たときTIMSSとPISAの両スコアが高い相関関係にあるからです。より正確に言うと、両者は「異なる学力」を測っているのではなく「<難易度>の異なる学力」を測っていると言う方が妥当ではないか、ということです。

PISAとTIMSSが測っている学力が違うとしたら、ある程度PISAの成績が良い国とTIMSSの成績が良い国の分布が異なるはずです。しかし、実際にはPISAの成績が高い国はTIMSSの成績も高く、PISAの成績が低い国はTIMSSの成績も低いです。同じ人が好成績を取っているということは、2つのテストが表面上は違う学力を測っているように見えても、本質的に同じ力を測っている可能性は高いと考えられます。これは「異なる学力」というよりはむしろ、「<難易度>の異なる学力」ではないでしょうか。そうであるとすると、PISAとTIMSSを二項対立のように比較してはならないでしょう。

須藤(2013)はTIMSSとPISAのスコアの関係性を分析し、以下のような主張をしています。 

  •   日本の生徒は、国際的に見ればTIMSS型学力とPISA型学力のどちらにも偏っていないバランスの良い学力を保持している。
  • ②  しばしば「日本の生徒はPISA型の思考力が足りない」という言説が聞かれるが、少なくとも国際的に見ればそのようなことはまったくない。
  • ③  文部科学省の「全国学力・学習状況調査」の結果についてもA問題(知識)よりB問題(活用問題)の正答率が低いことが注目されているが、それは日本の生徒がB問題に弱いというよりは、単純にB問題の難度が高いと解釈すべきだろう。

日本に限らず、国際的に見てもPISAの成績とTIMSSの成績は相関しています。ここから言えることは確かに両調査で測定されている学力は異なりますが、そうは言うものの極めて似たものである可能性は高いです

また、③も非常に興味深い解釈です。つまる所、「学力の違い」と「難易度の違い」を混合して議論するな!ということでしょう。私が、TIMSSとPISAが本質的に変わらないのではないか、と思う理由も同様の解釈からです。イメージとしては、◯を成績が良いということだと考えると、「TIMSS◯PISA◯」「TIMSS◯PISA×」「TIMSS× PISA×」はあり得るけど、「TIMSS× PISA◯」はあり得ないのではないか、ということです。

 

おわりに

「PISAが測っている学力」と、いわゆる「知識詰め込みの学力」はそこまで変わりません。そもそも、「偏差値教育」って本当に「ダメ」なの?②+α 〜テストで測れるもの、測れないもの〜でも述べましたが、テストで新たな能力を客観的に測るということは、容易いことではありません。「新しい学力」を大事にしていくことと、「新しい学力を測れるテストを実施していること」を、同じように考えてはいけないと思います。

そして、やはり教育は理念で語られることが多いからこそ、実際のデータを確認する必要があるように思います。今回の議論で用いたデータにも欠陥はあります。例えば、このデータからは、PISA型学力が高い人とTIMSS型学力が高い人が、同一である傾向があるのかどうかまでは踏み込んで議論できません。教育には響きの良さそうな言葉が多いので、意識的に注意していきたいものです。

 

<参照>

須藤康介,2013,『学校の教育効果と階層—中学生の理数系学力の計量分析—』東洋館出版社。

 

「偏差値教育」って本当に「ダメ」なの?① 〜「偏差値教育」をめぐる現状〜
「偏差値教育」って本当に「ダメ」なの?② 〜そもそも「偏差値」って何?〜
「偏差値教育」って本当に「ダメ」なの?②+α 〜テストで測れるもの、測れないもの〜
「偏差値教育」って本当に「ダメ」なの?③ 〜「偏差値教育」はなぜ排除されないのか〜

アンケート企画「PISAと「ゆとり教育」の関係、あなたはどう思う?」に関するアンケート結果についての記事はこちら!
● 【アンケート結果】PISA成績向上は「脱ゆとり」のおかげか否か?
● 【アンケート結果】教育の「脱ゆとり」化、あなたはどう思う?
● 【アンケート結果】あなたの理想の教育に近いのは、「ゆとり」or「脱ゆとり」?

記事執筆:よっち

教育社会学を専攻しています。 教育について当たり前に思われていることを、僕自身改めて考え直せるように書いていきたいと思います。

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