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子供虐待の真実『ルポ 虐待―大阪二児置き去り死事件』

2015/03/05

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『ルポ 虐待—大阪二児置き去り死事件』杉山春

大阪 児童虐待事件をとらえ直す

2010年夏、大阪の繁華街そばのワンルームマンションで、3歳の女の子と1歳の男の子が発見された。子どもたちは、猛暑の中、服を脱ぎ、重なるようにして死んでいた。母親は風俗で働く若い女性。「子供を家に置き去りにして男と遊びまわる女」の姿が連日メディアで報道された。

裁判で争点となったのは、「子供たちの母親に責任能力があったのか、また、殺意があったのか」。一体なぜ虐待は行われたのか。どうすればこの事件は繰り返されないのか。杉山春氏著の『ルポ 虐待——大阪二児置き去り死事件』から考えます。
 

なぜ子供は置き去り虐待されたのか 

虐待まで

虐待を行った容疑で逮捕されたのは風俗で働いていた「芽衣さん」(仮名)。「あおいちゃん」と「環くん」(それぞれ仮名)をシングルマザーとして育てていました。芽衣さんは「良き妻になりたい」という想いよりも、「良き母になりたい」という想いが強く、出産当初より、誰の目から見ても子育てや家事を頑張っていました。

それなのに、なぜ芽衣さんは子供たちの元に帰らず、置き去りにしてしまったのでしょうか。芽衣さんは、子供が嫌だったのではなく、子供の周りに誰もいないという状況が嫌だったのだと述べています。
 

虐待した被告の生い立ち

芽衣さんが生まれ育った地域は、近代化に伴い、地域のつながりが急速に失われた地域。幼いときに両親が別居・離婚した芽衣さんは、2人の妹と共に、教師をしていた父親に育てられました。父親は熱心なラグビー部の顧問でしたが、子育てに自分なりに取り組んでいました。

芽衣さんは、周囲から妹たちの母親代わりとなるように望まれ、また、強くあることが求められます。ここにいるのに、誰も自分の存在を気にしない。そんな想いを抱えながら過ごしてきたのです。次第に不良仲間と共に過ごすようになり、少年院に入ったこともありました。そんな彼女も、結婚して子供が出来、幸せな人生を手に入れたかのように思われました。しかし、そんな生活も崩れ始めます。芽衣さんの浮気が発覚したのです。
 

「良い母親」であろうとした

状況が恐くなって家から逃げ出した芽衣さん。夫と2人で話し合おうとしても、自分や夫の両親が話し合いの場には現れました。

芽衣さんは、あおいちゃんや環くんが、夫やその家族、自分の家族からも「なかったことにしたい」と思われていると感じていました。そんな子供たちが過去の自分と重なり、その状況を直視出来なかった、だから子供の元に戻れなかったのだと『ルポ 虐殺』では書かれています。

本心では離婚をしたくなかった芽衣さん。本当は、子供たちを自分が育てるのも無理だと感じていました。でも、それが母親としての務めだ、自分はそうするように求められている、と全てを背負おうとします。

自分が持つことが出来なかった立派な母親になり、あおいちゃんを育てることで、愛情に恵まれなかった自分自身を育てようとした。(本書 P.256)
子どもの幸せを考える時、母親が子育てから降りられるということもまた、大切だ。少なくとも、母親だけが子育ての責任を負わなくていいということが当たり前になれば、大勢の子どもたちが幸せになる。(本書 P.265)

苦しみが限界に達する 子ども虐待へ

ですが、その頑張りも長くは続きません。風俗の仕事で心に傷を受け続けていた芽衣さんは、ホストクラブに通い、その快楽から抜け出せなくなってしまいます。その一方、孤独な子供たちに目を向ける強さは、どんどん失っていきます。そして事件は起きるのです。

浮気やその後の逃避、また、置き去りにしても、「どうしてしてしまったのか分からない」と芽衣さんは語ります。以前当サイトでは、『こども虐待』という本をご紹介しました。この本を書いたのは、子供の虐待事情に詳しい西澤哲氏。西澤氏は、臨床心理士としての立場から『ルポ 虐待』でも解説を加え、芽衣さんは解離性の精神障害があると指摘しています。

一審の判決は懲役30年。これは児童虐待死事件としては重い判決ですが、芽衣さんは、自分の犯した罪の重さを受け止め、罰を受ける覚悟を固めています。なお現在は、懲役30年で確定しています。

「今でも、これからもそうだし、あおいと環(注:子どもの仮名)のことは愛している。今からもっと大変なことがあるとおもうけれど、こんな母親でも見守っていてほしいと思う(中略)(懲役)30年については、起こした事から考えれば受け入れなければいけないと思います。納得がいかないのは、”積極的でなくても殺意が認められる”ということです。上告したところで、結果が変わることは殆どないと思っています。それでも私は訴えていきたいです」(本書 P.264)


子ども虐待の問題はどこにあった? 見えて来る社会のひずみ

今回の虐待死事件からは、社会の変容によって生じたひずみが見えてきます。

寄せられていた虐待の通報

子ども相談センターや自治体には、虐待の可能性を訴える通報が寄せられていました。芽衣さんは生活保護を求めようとしたこともありました。行政や家族・知人が前兆に気付けなかった、事件を防ぐためにするべきことをしなかった、と考えることも出来るでしょう。ですが、そもそもの仕組みに問題があるのではないでしょうか。
 

半分以上が貧困

単身で暮らす女性の3分の1が、母子家庭では57%が貧困層に位置しています。それにもかかわらず、つながりが希薄になった現代社会では、下手に他者が関わろうとすると、却って当人たちの反発を招くこともあります。こうしたジレンマがこの事件の背景にはあるのです。

一方、周囲の助けを借りて生活の基盤を得たことで、虐待をやめることが出来た母親の事例も紹介されています。今回の事件は何が原因、と断定することは出来ません。ですが、このような事件が起こってしまう危険は十分にあります。
 

あなたも順調な人生を送れるとは限らない

この子供の虐待死が発覚した後、メディアでは関係者・関係機関の様々なエピソードが伝えられ、特定の人・物事を非難する声が目立ちました。確かに、責任追及が不必要とは言えません。ですがより大事なのは、事件を、自分も何らかのかたちで関わるかもしれない出来事、つまり「自分ごと」として一人ひとりが真剣に意識することなのではないでしょうか。いつ、誰に、どのようなかたちで悲劇をもたらすか分からない仕組みが、社会にはあるように思われてなりません。
 

事態はここまで深刻だった 子どもを取り巻く社会を考える

● 教師になる前に読んでおきたい本!「子ども虐待」
● 経済力と学力は比例する?「どもの貧困」
● 国のせい?親のせい?教育格差は、何が原因?

参考:『ルポ 虐待: 大阪二児置き去り死事件』 (ちくま新書、杉山 春 著)

記事執筆:瀬戸 亜希菜

教員ステーションの運営スタッフをしている大学4年生です。
教育に携わる全ての方のお役に立てると嬉しいです。

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